妄想突撃放談:零戦的美学

「いいかね ヒコーキは戦争や経済の道具ではないのだ それ自体が夢の結晶だ 美しくあらねばならん」
宮崎駿さん「風立ちぬ」原作


カプロニおじさんがイイこと云った!

早く、「風立ちぬ」の単行本を出してほしいですね。
でも、出ないところを見ると、宮崎氏が許可しないのかな。
ああ、掲載していた模型雑誌を全部買っておけばよかった・・・

さて、ひさしぶりにゆっくりとした休日で、ぼーっとしながら、飛行機系の模型雑誌「SCALE AVIATION 9月号」を眺めています。
宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」の総力特集です。

九試単戦、美しいですね。
この飛行機、「風立ちぬ」の原作版を見るまで知りませんでした。
もちろん、九試単戦の量産型である九六艦戦は知っていました。
九試単戦は九六艦戦と比べて、スマートで、逆ガル翼で、楕円型の翼の形もあり、特徴的でとてもかっこいいです。

この九試単戦・九六艦戦のコンセプトそのままに進化させると零戦です。

零戦は、性能的には欧米に肩を並べた、いや初期は追い越していました。しかし、戦争が長引くにつれ、日進月歩する敵国の飛行機の性能に追い越されていきました。
海軍は、零戦の後継機の開発に失敗し、結局、時代遅れになった零戦が戦争の最後まで主力機でした。
零戦は、その絶妙なトータルバランスによる余裕のなさゆえ、発展性に欠けました。
ドイツのメッサーシュミット、イギリスのスピットファイヤ、アメリカのムスタングなどが改良を続けて性能を伸ばしたのとは対照的です。

ちなみに、欧米では水冷のエンジンが主流でしたが、日本は結局、終戦まで水冷エンジンを実質的に実用化するまでに至りませんでした。(零戦は艦載機なので、枯れた技術である空冷星型エンジンの方が、安定性、耐久性、耐被弾性、空母内での整備性を考えると、ふさわしい選択だと思います。)

それでも、零戦が今でも語り継がれているのは、その初期の戦績だけが理由ではないような気がします。
エンジンの特性を踏まえたうえで、機体の空力的洗練と軽量化を徹底的に磨きあげるという、その機能的な美しさが日本的だからだと思います。
耐弾性能さえ削り、発展性までも捨てた儚さすら、その美しさのうちなのではないでしょうか。


さて、話はバイクにうつります。
戦後、日本製バイクの躍進を支えた、ひとつの到達点が4気筒エンジンだったのではないかと思います。
その精緻なメカニズムを実現できたのは、日本企業だけだった時代があります。
レースの世界でも日本のメーカーが席巻しました。
猫も杓子も4気筒で、250ccの、本来4気筒も要らない排気量まで4気筒でした。
日本は、いつしかレシプロエンジンのみならず、技術大国となりました。

その究極の形が、いまの、スズキ・GSX1300Rハヤブサやカワサキ・Ninja ZX-14R なのではないかと思います。
1000ccを超える大排気量スポーツツアラーです。
4気筒の弱点である低回転のトルクの無さは排気量でカバー。高回転域のパワーは絶大。
その重さとポジションゆえ、安定感があり低速でも扱いやすいという、万能選手みたいなバイクたちです。
こんなバイクは、いまでも日本のメーカー以外作れないのではないでしょうか。素晴らしいものだと思います。

でも、これらはまるで重戦闘爆撃機。いまでいうマルチロールファイター。零戦の美学は感じられません。
いつしか、日本には、オフロードやモタードを除くと、そういう美学のバイクはなくなりました。
いま、売れている非4気筒である250ccのロードバイク、Ninja250Rや、CBR250Rも、小さなハヤブサやZX-14Rというコンセプトで作られているような気がします。

私が、イタリアのバイクであるM696を選んだのは、むしろM696の方が零戦的だったからかもしれません。
いま、零戦的美学を感じるバイクは、外国のメーカーの方が多いような気がします。

私の個人的主観ですが、最近の日本のメーカーのバイクのデザインは、「強そう」だったり「速そう」だったりするのが好きでないです。
それ以外を求めようとするとレトロしか選択肢がなさそうな気がします。
さらに最近は、カウルやカバーで機構の安っぽさをごまかそうとする姿勢が感じられてなおさらです。
それに、なぜかネイキッド(ストリートファイター)は安っぽくても良い、と考えている節が感じられるのもどうにかならないかと思います。

一方、欧州メーカーは、KTMやメガリなど、低排気量車でも日本車に迫る価格の素晴らしいデザインの製品が出ています。品質は日本製品に及ばないのでしょうが、確かに日本製品にはない魅力があります。
プレミアムバイクではなくても、そういう選択肢が出てきているということです。

バイクは飛行機と同じ機能美の工芸品、美術品だと思います。
潔くコンセプトを突き詰めれば自然と美しくなると思います。
機能美の究極はレーサーなのでしょうが、飛行機の究極と戦闘機の究極が違うように、市販車には市販車の美しさがあると思うのです。

バイクって、生産的なものではなく、安いものでもありません。
いわゆる夢です。私達の生活で手に入るぎりぎりの夢を形にしたもの。
ならば、美しくあってほしいと切に願います。
そして、私にとってそれは、“強さ”や“速さ”ではない美しさであってほしいのです。
そういうバイクは、いまは外国製なのでしょうね。










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ジャンル : 車・バイク

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スイングアーム

なおさんこんにちは。
バイクのお話ですが、「カウルやカバーで」という点にとても共感しました。
個人的には「リアスイングアーム」がすごく気になってしまいます。
角型チューブで構成されたスイングアームでも要求された性能を満たしているのだというのはわかるのですが、コスト削減が目に見えてデザインに反映されてしまっているようで切なくなってしまいます。
私もやはり「カウルやカバーで隠された愚直で個性の無いスチール製フレーム」「コストカットを体現してしまっているようなスイングアーム」で構築されている国産バイクにワクワクを感じる事ができず、欧州メーカーのものを初めての中型バイクに選んでしまいました。
メカ好きのひとりよがりな考えかもしれませんが、国産メーカーさんにはもっと所有欲を満たしてくれるような「技術の粋を集めた」モノづくりをして欲しいなぁなどと思ったりしています。
でも今の日本の「技術の粋」は「美しい形状のクロモリ鋼管トレリスフレーム」などといった方向性ではないのかもしれませんね。(^_^;)

ちなみに私は、泣き所でもある水冷エンジンが故の細身のシルエットや、高アスペクト比の主翼など、良し悪しは別としてユニークな特徴を持つ三式戦闘機「飛燕」が大好きです。(^_^)

Re: スイングアーム

> 17Get さん
そんなアナタにこのページをプレゼント。
http://baikuto.doorblog.jp/archives/54477852.html

ご理解いただいていると思いますが、ついでに上には書きませんでしたが、日本のモーターサイクルメーカーの対象市場は、発展途上国であり、我々ではなくなっています。
故に、欧州メーカーのようなデザインにコストをかけるのは無駄にしかなりません。
結局、爛熟期を経験した我々の発達しすぎたセンスとメーカーの都合が一致しなくなっただけなんですね。
まあ、そんな人は高い欧州製品を買いなさいよ、ということだろうと思います。
でも、欧州メーカーがコスト削減に成功し、途上国の人でも買えるような製品を出している今、デザインを怠けている日本のメーカーはいずれまた負けると思います。

それにしても最近のホンダの400ccシリーズはひどいですね。
側面カバーでフレームを隠すという暴挙。一見ツインスパーフレームに見えるようにしてありますが、実はダイヤモンドフレーム。
カウルとカバーをひっぺがしてみると、案外悪くないんですよ。だったらその構造美を生かせばいいのに。

俗にいう“角材スイングアーム”や鉄製ダイヤモンドフレームが悪いとは思いません。
ならば、隠すなんてことはやめて、それを生かすデザインにしたらよいではないですか・・・ただ、70年代、80年代に戻るだけなのかもしれませんが・・・
私、ダイヤモンドフレームでも、角材スイングアームでも、サトゥルノのコピーと言われても、スズキのGOOSEみたいな、コーナーリングを楽しむだけのバイクが出るなら大歓迎ですよ。
それでこそ、CBR250Rみたいなエンジンが生きるというものではないでしょうか。

さて、三式戦は土井技師の設計ですね。
機体の頑丈さ、製造のしやすさまで考えた設計は、三菱の堀越技師より、かなりまっとうな“兵器としての設計”をされる方だと思います。
実は、一撃離脱戦法の有効性にかなり前から気づいてらっしゃったそうで、三式戦もその理想を暗に秘めたカタチだと思います。
でも、ただひたすらにエンジンがついてきませんでしたね。
その点で、三式戦はエンジンがもしまともであっても、もともとパワー不足による上昇力の無さから土井技師の理想は実現できなかったでしょう。

私、実は帝国陸軍の戦闘機では五式戦が好きなんです。
偶然とはいえ、実によい出来だと思います。
なんとなく、無骨とも不恰好ともいえない、絶妙なアンバランスは、カワサキらしいような、そうでないような・・・
プロフィール

なお

Author:なお
いいトシしてバイクの免許を取得。
相棒はDUCATI MONSTER696とHONDA solo。
バイク以外の趣味はお菓子作り。
MtXです。

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