大人の現実(ゆうきまさみさん「機動警察パトレイバー」)

ゆうきまさみさんのマンガ「機動警察パトレイバー」を思い出しています。
いま、手元に本がないのだけれど、地味だけど衝撃的な作品でした。

一見、社会派ロボットアクションなんだけれど、物語の本質は、主人公である女性の成長です。
無邪気だった女の子が、世の中の現実にもまれて大人になる話です。

全然、宿敵のロボットに勝てないんですよ。
しかも相手の犯罪も、それを追う警察の捜査も、主人公とは全く無関係に進んでいきます。
主人公は無力な自分に怒りを覚えたりしつつ、それでも「日常」は進んでいきます。

そしてクライマックス。とうとう主人公が毎日積み重ねた経験が相手のスキルと性能を上回るときが来ます。
慣れ親しんだ愛機を駆使した捨て身の攻撃で、泥まみれの辛勝を得ます。
そして、相手のパイロットの少年をコクピットから引きずりだし、「自分のやったことを見ろ」と罪の意識をもたせようとします。
しかし、それは無駄な努力でした。デザインド・チャイルドである少年には、罪の意識は設定されていなかったのです。彼にとっては全てが「ゲーム」だったのです。

主人公はシャワールームでひとり、泣き崩れます。
そこに救いはありません。
最後、テレビ番組のインタビューで「私達は責務を果たした」と語る彼女のほほえみは、もう少女のものではありませんでした。

少年マンガでこれほど現実の「大人」を描いた作品は他に知りません。
現実世界は、少年マンガとはかけ離れていて、ただ、地味な毎日の積み重ねだけが、自分を前に進めるのだという、そんなことをゆうきまさみさんは描きたかったのではないかと思います。

なにより、それをエンターテイメントにできるというのが、ゆうきまさみさんのすごいところです。
地味な毎日と敗北を積み重ねる主人公に対し、まったく主人公とは無関係に進む、犯罪者とほとんどアウトローな警察官たちの暗躍が読者にスリルやカタストロフといった満足感を与える仕組みになっています。

いまでも思い出すのだから、自分に大きな影響を与えてくれた作品であろうと思います。


おお、3,000円強で全部読めてしまう…

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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なお

Author:なお
いいトシしてバイクの免許を取得。
相棒はDUCATI MONSTER696とHONDA solo。
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