きっと水沢先生が言いたいこと(「ヤコとポコ」2巻)

(以下ネタバレあります)
7月に、水沢悦子先生の「ヤコとポコ」についての感想を書きました。
その2巻が出たので、その感想を。

まず、前回の感想で、この作品のテーマに「心の距離」を感じると書きましたが、2巻では、それがさらに浮き彫りになっています。
151117ヤコとポコ2巻

「そーだねぇ 近づき過ぎないほうがいい時ってあるものね
 革命の前がそうだった みんな・・・こう 電話とかパソコンを身につけてて・・・
 人と人との距離感がめちゃくちゃだったな」


私、実はLINEが苦手で。
これを使ったら、人との距離がとれなくなるなって思って。

ネットって便利だけれど、いま、とてもよくない使い方をされていると思います。
匿名だからって、実はなんでもないような有名人のミスを、大勢の名もない人々が社会正義の名の下にいじめたりとか。
「消費者の権利」を必要以上に振りかざしたりとか。
だから、私は、ときどきiPhoneを機内モードにして、放っておくことがあるんです。

「ヤコとポコ」の未来世界では、人々はICT技術を封じる社会を選択しました。
ネットはあるけれど、そのツールに機能限定をすることで、近づき過ぎないようにしているのです。

でも、2巻のテーマではそれだけではありませんでした。

この作品では、主人公のヤコとポコと対比するキャラクターとして、オリーブ・翠(みどり)が出てきます。
彼女はあえて仕事をとらず、理想を追いかけるヤコとは違い、ヒット作を量産するタイプのマンガ家です。
そして、心から信頼する「てきとうモード」のパートナーロボットであるポコ一人をアシスタントにしているヤコと違い、「かんぺきモード」のロボットをたくさん利用しています。
151117ヤコとポコ2巻
オリーブ・翠(1巻より)

どんどん連載を増やし、ロボットを増やし、自分を追い込んでいくオリーブ。
でも、そのツケが思わぬところに出ます。
そして、オリーブは大切なことに気付き、さらにロボットたちに救われるというのが2巻の見どころです。

驚きました。
いやまさか!?という感じです。
私は大泣きしてしまいました。彼女の一番のパートナーであるロダンの健気さに。
そしてふたりのあやまちに。

私は、オリーブみたいな人達をたくさん見てきました。
主に会社経営者です。
「自分は偉大な人間になれる」と夢を見て、経営者になってみたのは良いものの、現実は厳しいです。実際はそんなものは運なのです。うまくいく人はうまくいくし、そうでない人はそうじゃない。それだけなのです。
だけど夢見る人は「自分はこうでなくていけない」という気持ちが強く、「もっと努力しなくてはいけない。努力が足りないんだ。誰もわかってくれないんだ」となります。さらにその価値観を周りの人や従業員に押し付けるから、だんだん孤独になり、自分の首を締めていく。

私は、日本人は良くやった、と思います。
そろそろ、諦めて良い頃だと思うのです。
右肩上がりの未来というものを。
そしたら、見えてくるものがあると思うのです。
決して退廃思想ではありません。
戦略的撤退です。
右肩上がりの経済なくしては成り立たない資本主義と民主主義というものが、本当に日本人にふさわしいかどうか、考え直してみてもよいのではないかと思うのです。

本来明るい未来を描くべきマンガではありますが、いま、明るい未来を描くのはマンガでも難しいです。
日本人が、明るい未来を信じていないからだと思います。
水沢悦子さんは、ICT技術の制限と、がんばることと心の支えをロボットに任せる未来を描きました。

ロボットたちは健気です。
「ヤコとポコ」の世界で言うところの「革命」、それはきっとテクノロジカル・シンギュラリティ。
ホーキング博士らはどうやら「新造人間キャシャーン」みたいな未来がやってくると考えているようで恐れていますが、私は良い方向へ持っていけると信じています。人間の心に愛がある限り。
たとえ、それが人間にとってゆるやかな黄昏の時代の到来であったとしても。



テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

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相棒はDUCATI MONSTER696とHONDA solo。
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