愛着と熟知

昔、「デストロイヤー」と言われた人がいまして。
いや、プロレスラーじゃなくてパイロットで。
それは菅野直(なおし)、その人です。
第二次世界大戦時の海軍エースパイロットのひとりで、二階級特進で中尉。享年22歳。

訓練生時代についたあだ名は「菅野デストロイヤー」。
なぜかというと、飛行機を何機も壊しまくったのです。
のちにエースパイロットになる人が、なぜそんなに飛行機を壊したのか。

彼は、下手だったからでも、自己顕示欲を満たしたかったのでもなく、きっと訓練の段階で機体の限界を知りたかったのだと思います。
着陸時に壊していたらしいのですが、墜ちても自分が死なない高度でいろいろと試していたのでしょう。

彼がのちにとった戦法を紹介します。
彼の編み出した大型爆撃機の攻撃方法は、敵より1,000m高い位置から機体を反転、つまり上下を逆にしてから、急降下。
銃撃・砲撃を浴びせて、爆撃機の主翼の前を掠めつつ離脱、というものです。
なぜ主翼の前かと言うと、爆撃機に複数設置された銃座からの弾幕が薄いらしいのです。
撃たれるより衝突のリスクをとったと言えます。

ゼロ戦って実は急降下攻撃が苦手な飛行機です。
軽いのと、その軽さを追求した結果、急降下を続ける強度を持っていません。
なので彼のとった戦法は、ゼロ戦の降下限界スピードを保ちつつ、なおかつ回避運動を考慮したうえで照準を敵機にあわせるという、機体を熟知していないとできないものでした。

ゼロ戦の20mm機関砲が一発でも当たれば、巨大な重爆撃機でもただではすみません。
それ以上に敵から見たら体当たりしてくるように見えたはずです。
それは狂気以外の何でもなく、彼のゼロ戦に施された黄色いラインから、「イエローファイター」と敵から恐れられたそうです。

また、彼は重爆撃機B-24の垂直尾翼に、ゼロ戦の主翼を引っ掛けて壊して撃墜させています。
どこにどうぶつければいいのかわかっていないとできない芸当です。

当たり前といえば当たり前のことではありますが、機体を自在に操るには、その機体を熟知する必要があるのだろうと思います。

さて、その後、彼はゼロ戦から紫電改に乗り換え本土防衛に活躍しましたが、そんな彼ですら戦死されたのでした。
撃墜されたのではなく、原因は機銃の暴発でした。

組織の枠にとらわれず、部下を守り、気に入らない上司には歯向かい、戦いでは勇猛果敢で名を馳せた彼ですが、実は文学青年だっそうです。
本当はとても繊細な人だったのだと思います。
結婚もしたかったらしいし、大学へも行きたかったそうです。
戦争がなければ、この大胆さと繊細さで、一角の人物になったかもしれません。
そう思うと大変に残念です。



さて、話を変えて、当時の日本のパイロットたちの愛機や新鋭機の評価を。

「雷電はいい戦闘機だ。もう少し燃料が積めたらもっといいが」
赤松貞明中尉

「紫電改は零戦なんて問題にならないくらいすごい。(中略)『よっしゃ!これでグラマンに勝てる』と、自信を持った。」
笠井智一上等飛行兵曹
http://www.sankei.com/west/news/150410/wst1504100010-n3.html

「(四式戦 疾風 試作キ84について)これはいける」
岩橋譲三少佐

「(四式戦 疾風は)スピード、上昇力、旋回性、みな二単(二式単戦 鍾馗)よりいいぞ。それにアシ(航続距離)だってずっと長い」
若松幸禧(ゆきよし)中佐

「(四式戦 疾風で初めて遭遇したアメリカの新鋭機P-51Bムスタングを撃墜して)赤子の手をねじるがごとし」
若松幸禧中佐

「五式戦をもってすれば絶対不敗」
小林照彦少佐

当時の日本の戦闘機は連合国のそれと比べて、決して優秀というわけではありません。
でも、彼らは与えられた機体を愛しました。
そういう思い込み、いわゆる愛着というものも、それを操るうえで大切なものであると、私は思います。


また話は変わりますが、赤松中尉は雷電、菅野中尉は紫電改のイメージがあります。実際はゼロ戦に乗っていた期間のほうが長かっただろうと思いますが。
同じくマスタングキラーの若松中佐も鍾馗に乗っていた期間の方が長いと思いますが、やっぱり疾風のイメージ。
戦後の人間の勝手なイメージですが、やっぱりパイロットと飛行機は組み合わせです。

そういう意味ではバイクも同じですね。
私は愛着と熟知のもたらす力のようなものがあると思っています。

テーマ : 日々のつれづれ
ジャンル : 日記

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相棒はDUCATI MONSTER696とHONDA solo。
バイク以外の趣味はお菓子作り。
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